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大阪高等裁判所 昭和57年(ネ)513号・昭58年(ネ)2364号・昭57年(ネ)496号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

請求原因(五)のとおり、金平翰、控訴人ら(秋山小まつを除く)を権利者とする各登記がされていることは当事者間に争いがない。

<証拠>によれば、秋山圭及び控訴人秋山小まつは連帯して金平翰に対して債務を負つていたところ、昭和二九年四月一五日右債務を担保するために本件不動産につき抵当権設定契約及び停止条件付賃借権設定契約をし、更に同年一二月七日右債務を含む債務を担保するため本件不動産につき譲渡担保設定契約をして、これらを原因として請求原因(五)の登記を経たこと、金平翰は昭和三二年五月三一日に死亡し(登記と死亡の点は当事者間に争いがない)、控訴人金尚淑はその長男であり、控訴人金暢淑、金聖淑、金明淑、金健淑は金平翰の子であるが長男ではなく、金平翰は大韓民国の国民であつたので、同国の法により控訴人金尚淑が単独で金平翰の権利義務を全て相続により承継したこと、右の担保権の被担保債権は昭和五六年の時点では、貸金等四二四万九七六八円、及びこの内金一八六万二三四四円に対する昭和三六年七月八日から支払済まで年三〇パーセントの割合による遅延損害金であることが認められる。

<証拠>によれば、大阪市北区役所徴税吏員は、本件不動産についての昭和三一ないし五八年度の控訴人金尚淑に対する固定資産税一一九三万五一四〇円、及びこれに対する延滞金一二一二万〇五〇〇円の租税債権を徴収するため、昭和五六年十一月五日、同五七年七月五日、五八年四月二六日に右の被担保債権を差押え、その旨を控訴人秋山小まつに通知したこと、控訴人秋山小まつは昭和五八年九月八日大阪市北区長に対し、右差押の第三債務者として被差押債権一六六三万七六七二円を支払つたことが認められ、<証拠>によれば、秋山圭及び控訴人秋山小まつは昭和三一年始以降は本件不動産を使用収益していることが認められる。

控訴人ら(秋山小まつを除く)は、本件不動産の固定資産税は、これを使用収益していた控訴人秋山小まつが負担すべきものであつて、同控訴人の支払つたものは自己の負担する固定資産税であるから、右支払により貸金等の被担保債権が消滅することはないと主張する。しかし、固定資産税は原則として不動産の所有登記名義人(共有名義のときは、各名義人とも連帯納付義務)に課されるものであるところ、昭和三〇年四月二五日以降は本件不動産の所有名義人は金平翰又は控訴人金尚淑らであつたことは前記のとおりであり、秋山圭又は控訴人秋山小まつが大阪市北区長に対し固定資産税債務を負つていたとの証拠はない。そして、右乙四号証によれば、大阪市北区長が右一六六三万七六七二円の受領に際し控訴人秋山小まつに交付した領収証書には、「第三債務者秋山小まつ殿」、「納入事由 昭和五六年一一月五日、同五七年七月五日、同五八年四月二六日付差押債権にかかる納入金」と記載され、控訴人秋山小まつ自身の租税債務の納入とは記載されていないことが認められる。これらの事実からすると、控訴人秋山小まつが大阪市北区長に支払つた金員は、同控訴人の租税債務ではなく、差押にかかる貸金等の債権であることが明らかである。この点に関する控訴人金尚淑の主張は、登記名義人(租税債務者)と使用収益の所有者の間の内部的求償関係と租税徴収法上の関係とを混同するものであつて採用することができない。

しかし、前記認定の事実によれば、控訴人金尚淑は本件不動産について所有登記名義は有しているものの、その実体は担保権を有しているだけであつて、秋山圭又は控訴人秋山小まつは債務を弁済して本件不動産の負担のない権利を回復することのできる所有権を有して来たと解され、また本件不動産を使用収益して来たものであるから、控訴人金尚淑は自分に課された固定資産税を支払つたときは、これを不当利得として控訴人秋山小まつに対し返還請求ができるものと解される。本件において控訴人秋山小まつの北区長への前記支払により控訴人金尚淑の固定資産税債務が消滅した(国税徴収法六七条三項)が、これは控訴人金尚淑の控訴人秋山小まつに対する貸金等債権の消滅という控訴人金尚淑の出捐によつて生じたものであるから、同控訴人の弁済と同視することができ、同控訴人は控訴人秋山小まつに対し、一六六三万七六七二円の返還を求めることができる。

そして、このような担保物についての固定資産税は担保物についての費用と解することができるから、その返還請求権はその担保権によつて担保されているものと解すべきである。

そうすると、控訴人金尚淑は被控訴人の権利には劣後するものの、本件不動産になお前記担保権を有しているから、所有者控訴人秋山小まつに対する清算金の支払と引換えでのみ、被控訴人の仮登記の本登記に承諾をする義務があることになる。

(上田次郎 道下徹 井関正裕)

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